その他 2026年03月04日
#AI #Block #雇用 #AIリストラ

「AIが来たので、あなたは必要ありません」―Blockが4,000人超をリストラした日


ある朝、いつも通りメールを開いたら、自分の仕事の8割がAIのダッシュボードに移っていた――そんな話が、SF映画の中だけではなくなってきた。
決済会社Blockで働いていた人たちは、2025年の終わりごろからじわじわとそのリアルを感じていたはずだ。
そして2026年2月26日、ジャック・ドーシーCEOが社内向けメモでこう宣言した。「インテリジェントツールのおかげで、少人数でより多くのことができる」。
同日、従業員の約40%に解雇通知が届いた。


ニュース(事実)

決済・フィンテック企業のBlock(旧Square)が、全従業員の約40%にあたる4,000人超の削減を発表した。
削減後の従業員数は10,000人超から約6,000人規模に縮小される。
CEOのジャック・ドーシー氏はその理由を「AIツールの導入で少人数でも同等以上の成果が出せるようになった」と説明している。

  • AIツール導入を主な理由に明示した大規模削減として注目されている
  • ドーシー氏は「1年以内にほとんどの企業が同じ結論に達するだろう」と予告
  • 退職者には手厚い退職パッケージが用意されている(詳細後述)

これはつまり、「AIを使えば人を減らせる」という経営判断が、現実のビジネスに踏み込んできた最初の大きな波だ。


3行まとめ

  • 本質: AIが「補助ツール」から「人員削減の根拠」へと格上げされた転換点
  • 構造: 少人数×AI = 従来の大規模チームと同等の成果、という経営方程式が成立し始めている
  • これから: ドーシー予言通りなら、2027年までに同様の判断をする企業が続出する可能性が高い

初心者向け:まずここだけ読めばOK
世界的な決済会社がAIを理由に社員の4割をリストラした。
「AIが仕事を奪う」という話が、ついに大企業の決算報告レベルで現実になってきた。
自分の職場でも、同じことが起きるかもしれない話として受け取ってほしい。


用語の整理

  • ストックベスティング(株式付与): 会社から報酬として株をもらう権利が「解除」されること。退職時にこれが残っているかどうかで受け取れる金額が大きく変わる
  • フィンテック: 金融(Finance)×技術(Technology)の造語。Blockが手がけるキャッシュレス決済やビットコイン取引などがこれにあたる

詳細

1. なぜ重要か――「AIリストラ」が特別な理由

これまでも企業の人員削減はあった。
業績不振、景気後退、事業縮小――理由はさまざまだった。
でも今回のBlockが特殊なのは、業績が悪いわけではないのに削減している点にある。

ドーシー氏が挙げた理由はシンプルだ。
「AIがあれば、少ない人数で同じことができる」。
これが経営的に成立してしまうと、企業が「適正人員数」をAIの導入量に合わせて下方修正していく動きが加速する。

Blockは元々Squareという名前で知られ、中小店舗向けの決済端末やキャッシュアプリ(Cash App)、さらにビットコイン事業も手がけている多角的なフィンテック企業。
エンジニアや製品開発チームを大量に抱えていたが、その多くのポジションがAIで代替可能と判断されたということだろう。

2. 退職パッケージの中身

項目 内容
基本退職金 20週間以上の給与
勤続加算 1年につき1週間分を追加
株式付与(ベスティング) 5月まで継続
健康保険 6ヶ月間カバー
会社デバイス 支給(持ち帰り可)
特別手当 5,000ドル追加支給

日本企業の一般的な退職金と比べるとかなり手厚い内容だ。
「切り方が丁寧だから許される」という話ではないが、この設計は他社が追随するときの基準になる可能性がある。

3. ドーシー氏の「予言」が怖い理由

「1年以内にほとんどの企業が同じ結論に達する」というコメントは、単なる強がりではなく、経営者の肌感覚として捉えるべきかもしれない。

AIツールのコストは急速に下がっている。
一方で、人件費(特にエンジニアや知識労働者)は高止まりしている。
この逆転が起きた瞬間、多くの企業の取締役会で同じ計算式が走るだろう。

Block一社の話ではなく、業界全体への号砲として読み解く必要がある。

4. 影響――誰がどう受け取るか

日本企業の人事・経営層にとって:
国内でも「AI活用で生産性向上」という文脈は広がっている。
Blockの事例は「実際に削減できる」という前例として参照されるだろう。

エンジニア・デザイナー・コンテンツ系職種にとって:
「自分の仕事はAIに置き換えられにくい」という安心感が揺らぐ事例になった。
ただし、AIを使いこなす側に回れる人材の価値は逆に上がっている。

転職市場・フリーランスにとって:
大量の元Block社員(多くはフィンテック・エンジニアリングの経験者)が市場に出てくる。
短期的には競争激化だが、優秀な人材を採用するチャンスでもある。


今日の1アクション

自分の仕事の中で「これ、AIに頼めないかな」と思うタスクを1つだけ書き出してみてほしい。
Blockで起きたことを「他人事」と切り捨てるより、「じゃあ自分はAIをどう使うか」に変換するほうが、これから絶対に役に立つ。
使いこなす側に早く慣れておくことが、今できる一番の準備じゃないかと思っている。


出典


筆者コメント

個人的に引っかかっているのは、退職パッケージの「5,000ドル追加支給」という謎に細かい数字だ。
「AIで置き換えるけど、せめてこれで」という罪悪感の値段なのか、それとも訴訟リスクをヘッジするための設計なのか――どちらにせよ、企業がAIリストラを「経営の選択肢」として真剣に試算し始めている証拠だと思う。
日本だと退職金規制や雇用慣行がある分、同じ速度では動けないけど、フリーランスや契約社員は先に波が来る可能性が高い。