# AIエージェントを「優秀な新人」から「専門家」に変える — Anthropic Claude Coworkプラグインの本質と活用法
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Anthropicが2026年2月24日、AIデジタル同僚ツール「Claude Cowork」に複数の業務特化プラグインと外部コネクタを追加した。
対象はHR・デザイン・エンジニアリング・財務分析・投資銀行まで幅広い(営業プラグインは2026年1月30日の初回リリース時に公開済み。Anthropic公式ブログ、Reworked報道)。
Google Workspace・Docusign・FactSet等への外部コネクタも同時に追加され、AIが社内の実データを参照して動ける範囲が大きく広がった。
(出典: Anthropic公式ブログ、TechCrunch)
これはつまり、「AIに業務の型を入れて育てる」フェーズに本格的に入ったということだ。
3行まとめ
- 本質: 機能追加というより、「暗黙知をパッケージ化してAIを育てる」流れが明確になった
- 構造: プラグインは「業務の型(手順+知識)」、コネクタは「実データに触る手段」
- これから: 公式プラグインをそのまま使うより、自社用に翻訳して運用に載せたときに価値が出る
初心者向け:まずここだけ読めばOK
- 今日のゴールは「理解」+「最初の一歩が想像できる」こと
- まずはプラグインを1つ入れて、1つの作業だけ試すイメージを持てれば十分
- MCP・Agent SDK・GitHub構造みたいな開発者向けの話は、今は「そんな仕組みもある」くらいでOK(該当セクションには「読み飛ばしOK」と書いてある)
用語の整理
初心者はこの2つだけでOK:
| 用語 | 役割 | たとえるなら |
|---|---|---|
| プラグイン | 業務の型を一式で入れるパッケージ | 「業務マニュアル一式」 |
| コネクタ | Google Drive等の外部サービスにつないでデータを扱う | 「AIの手足」 |
深掘り(読み飛ばしOK):
| 用語 | 役割 | たとえるなら |
|---|---|---|
| MCP(Model Context Protocol) | コネクタ接続に使う共通規格 | 「橋渡しの共通言語」 |
| スキル | AIに業務手順を教える定義ファイル(Markdown形式) | 「手順書の1ページ」 |
(※公式の用語体系に筆者の解釈を加えたもの)
ざっくり構造:
プラグイン(箱)=「業務の型」+「使うデータ/ツール」+「呼び出し方」
└ コネクタ = Google Drive等につなぐ"手"
└ スキル = 手順書(Markdown)
└ MCP = コネクタの共通ルール(※深掘り)

この説明は公式の「プラグインはコネクタ・スキル・コマンド等を束ねたもの」という定義に沿っている。

出典: Anthropic公式ブログ
詳細
1. なぜ重要か — 「使う」から「育てる」への転換点
月曜の朝、Slackとメールと資料が一気に押し寄せて、「今日やるべきこと」が霧の中になる。
そういうとき本当につらいのは、作業そのものより「何からやるか決める時間」だ。
今回のプラグイン追加は、単なる新機能リストではなく、「その判断を仕組みにする」方向に進んだニュースとして見ている。
AIエージェントはそのままだと「優秀な新人」。何でもそつなくこなすが、「うちの業界では○○が常識」「この書類は△△の順番で作る」みたいな暗黙知は持っていない。
プラグインは、その暗黙知を手順・判断基準・ワークフローとして構造化し、AIに渡す仕組みになっている。
つまり、優秀な新人を"専門っぽく動ける状態"に寄せるための業務マニュアルにあたる。(※この比喩は筆者の解釈。公式には「業務特化プラグイン」と表現される)
2. 新プラグインの中身 — AIは「汎用」から「専門」へ
今回追加されたプラグインは、HR・デザイン・エンジニアリング・財務分析など幅広い分野をカバーしている。
ただ、初心者の視点で重要なのは「分野が多いこと」より、"AIに業務の型が入る"こと。
たとえば(代表例3つ):
- HR: オンボーディング計画や評価・報酬分析のたたき台
- エンジニアリング: インシデント対応、デプロイ前チェックリスト、ポストモーテム
- 財務分析: 財務モデリングやレポート作成の下書き
ここで掴むべきは、**「AIが"何でも屋"から"職種っぽい動き"をしやすくなる」**という構造の変化だ。
全分野一覧(クリックで展開)
| 分野 | 公式記載の用途例 |
|---|---|
| 人事(HR) | オファーレター作成、オンボーディング計画、人事評価、報酬分析 |
| デザイン | クリティークフレームワーク、UXコピー、アクセシビリティ監査、リサーチ計画 |
| エンジニアリング | スタンドアップ要約、インシデント対応、デプロイチェックリスト、ポストモーテム |
| オペレーション | プロセス最適化、ワークフロー管理 |
| ブランドボイス | 企業トーン&マナーの統一 |
| 財務分析 | 財務モデリング、レポート作成 |
| 投資銀行 | ディール分析、ピッチ資料作成 |
| エクイティリサーチ | 企業分析、バリュエーション |
| プライベートエクイティ | ポートフォリオ分析 |
| ウェルスマネジメント | 資産運用レポート |
(Anthropic公式ブログの記載を基に要約)
3. コネクタ — AIが「実データ」に触れるようになった
プラグインが「業務の型」なら、コネクタは「実データに触る手段」。
これが入ると、AIは"それっぽい文章を作る"だけじゃなく、実際の資料・予定・メール・契約情報などを参照した上で動けるようになる(もちろん権限設計が前提)。
初心者はまずここだけ押さえるといい:
- コネクタが増えるほど便利になる一方で、権限や情報の扱いが一気に重要になる
- だから最初は1〜2個の接続に絞るのが安全で現実的
コネクタ一覧(クリックで展開)
以下の外部サービスへの接続がサポートされた(Anthropic公式ブログより)。
なお、公式はコネクタを "connectors (MCPs)" と説明しており、多くのコネクタはMCP経由で接続される設計になっている(GitHub README参照)。
- Google Workspace: Calendar、Drive、Gmail
- 業務ツール: Docusign、Apollo、Clay、Outreach、WordPress
- データ/金融: Similarweb、MSCI、FactSet
- 法務: LegalZoom、Harvey
また、S&P Global、Common Room、Tribe AI、Slack by Salesforceなどがパートナーとして独自プラグインを開発しており、エコシステムが形成されつつある。
Excel・PowerPointとの連携もリサーチプレビューとして提供が始まっている(対象プランや提供範囲は変更される可能性がある。詳細はAnthropic公式ブログを参照)。
4. プラグインの設計思想はClaude Cowork専用ではない(開発者向け・読み飛ばしOK)
ここがポイント。
プラグインの実体はGitHubリポジトリ(anthropics/knowledge-work-plugins)で公開されている。GitHub READMEによると、標準的なプラグインはmanifest(plugin.json)・MCP接続設定(.mcp.json)・commands・skills(Markdown)といった要素で構成される。
公式は「plugins work across Cowork and anything built on the Claude Agent SDK」と説明しており、Claude Agent SDKベースのアプリケーションでもプラグイン資産を活用できる構造になっている。
具体的には:
plugin.jsonがプラグインのメタデータ(名前・説明・バージョン等)を定義する.mcp.jsonでMCP接続先の設定を汎用的に記述skills/ディレクトリにMarkdown形式の業務手順を格納- 自社向けにフォーク(コピー)して、業界固有のルールや手順を追加することも可能
Anthropicが出したプラグインはあくまで汎用的な出発点だ(公式は"generic starting points"と説明)。(※以下は筆者の解釈)
これをそのまま使うのではなく、自社の業務フロー・ルール・用語に合わせてカスタマイズすることで、初めて「社内専門家AI」として機能する。
5. 管理者向けの制御機能(管理者向け・読み飛ばしOK)
エンタープライズ導入で重要なのはガバナンス(統制)。
今回のアップデートでは以下の管理機能が追加された(Anthropic公式ブログより)。
- 組織専用マーケットプレイス: 社内で使えるプラグインを管理者が制御
- プライベートGitHubリポジトリからの配布(限定ベータ): 社外非公開のプラグインを社内配布
- ユーザーごとのプロビジョニング: 部署・役割に応じてプラグインを自動配布
- OpenTelemetry対応: 利用状況・コスト・ツール操作をチーム横断で可視化
6. 「育てたAI」が失敗するパターン — 3つの落とし穴
プラグインで「AIを育てる」のは正しい方向だが、育て方を間違えると逆効果になる。(※以下は筆者の実務経験に基づく見解)
落とし穴1: 暗黙知を詰め込みすぎて「硬直したAI」になる
手順を細かく書きすぎると、想定外のケースに対応できなくなる。
最初は「判断基準」だけを書き、細かい手順は運用しながら追加していくのが鉄則だ。
落とし穴2: コネクタを増やしすぎて「権限事故」が起きる
便利だからと接続先を増やすと、AIが意図しないデータにアクセスするリスクが生まれる。
まずは1〜2個の接続に絞り、運用が安定してから段階的に増やす方が安全だ。
落とし穴3: ワークフローが長すぎて実運用で回らない
20ステップのワークフローを組んでも、途中でエラーが出たときの対処が複雑になりすぎる。
1プラグイン=1業務フロー(5ステップ以内)を目安に、小さく始めるのがいい。
7. 影響 — 誰にどう効くか
会社員(チームで働く人):
これまでAIは「個人の便利ツール」だった。プラグインが入ると、チーム全体で「同じ型」を共有できるようになる。
新メンバーのオンボーディング、レポート作成、定例会議の準備 —— こうした"毎回やるけど毎回微妙に違う"作業が、プラグインで標準化される可能性がある。
副業・フリーランス:
自分の業務手順をMarkdownで書き出す習慣がそのまま「AIのスキル」になる。
高い専門ツールを導入しなくても、Claude Coworkのプラグインで「自分専用の業務AIアシスタント」を作れる環境が整いつつある。
経営層・意思決定者:
AIを「全社導入した」だけでは差がつかない時代に入る。
差がつくのは、自社の暗黙知をどれだけ構造化してAIに渡せるか。それがそのまま組織の競争力になる。
今日の1アクション
次に「面倒だな」と思った繰り返し作業が来たとき、まずAIに下書きを作らせてみる。
その上で「OK/NGの基準を3つだけ」言葉にしてみてほしい。
たったそれだけで、次回から"迷う時間"が減っていく —— それがプラグイン(=業務の型)の種になる。
出典
- Customize Cowork with plugins — Anthropic公式ブログ(※2026年1月30日初回公開時)
- Anthropic Rolls Out Plugins for Claude Cowork Workflows — Reworked(※同上の報道)
- Anthropic launches new push for enterprise agents with plug-ins for finance, engineering, and design — TechCrunch
- Cowork and plugins for teams across the enterprise — Anthropic公式ブログ
- anthropics/knowledge-work-plugins — GitHub
筆者コメント
プラグインの中身はMarkdownのskillsとJSON設定(manifest/MCP/commands)の組み合わせ。普段スキルを書いている人にはすぐピンとくる構造だ。
結局、一番大事なのはプロンプトでもツールでもなく、「自分の仕事の手順を説明できるか」。ここがAIを育てる出発点になる。