経営コンサルの倒産・廃業が過去最多ペース。AIに「食われる人」と「頼られる人」の分かれ目はどこ?
その他 2026年06月11日
#AI #生成AI #経営コンサル #キャリア

経営コンサルの倒産・廃業が過去最多ペース。AIに「食われる人」と「頼られる人」の分かれ目はどこ?

「この資料、AIで作ったほうが早くない?」
ある研修先で、若手社員がぽろっと口にした一言です。
その場は笑いになったけれど、外部に頼んでいた調査レポートの契約が、その四半期で終わったと後から聞きました。
資料の中身ではなく、「誰に頼むか」が静かに入れ替わっていく。
そんな"選別の兆し"が、統計の数字に表れ始めました。

帝国データバンクが6月5日に発表した調査によると、2026年1〜5月の「経営コンサルティング業」の倒産・休廃業解散は累計242件。
前年1年間の568件を約1割上回るペースで、年間では2000年以降で最多となる可能性があると報じられています。

この記事では、数字の中身と、AI時代に「食われる人」と「頼られる人」を分けるものは何かを、AI導入支援の現場の実感込みで書きます。
コンサル業界の話に見えますが、読み終わる頃には「これは自分の仕事の話だ」と感じてもらえるはずです。
むしろ、コンサル以外の方にこそ読んでほしい統計だと思っています。

先に結論だけまとめると、この記事で持ち帰ってほしいのはこの3つです。

  • 厳しくなっているのは「相談に乗る仕事」ではなく、制度頼み・作業代行型の仕事
  • AIに渡せる作業を早めに渡し、判断・対話・信頼づくりに時間を使う人が頼られやすい
  • まずは自分の仕事を「AIへ渡せる仕事」と「自分だから頼まれる仕事」に分けてみる

数字が示す「選別」——242件の中身

経営コンサル 選別が始まった

経営コンサルティング業の倒産・休廃業推移(帝国データバンク)

まず数字を整理します。

項目 2026年1〜5月 補足
倒産 74件 過去最多ペース
休廃業・解散 168件 前年同期比12.8%増
合計 242件 前年通年568件を約1割上回るペース
年間見込み 600件超の可能性 2000年以降で最多か

帝国データバンクの分析で目立つのは、「実体的な付加価値を提供してこなかった事業者」の破綻です。
たとえばコロナ禍で急増した、IT導入補助金などの申請代行。
審査の厳格化と参入業者の増加、そして顧客需要の一巡で、ビジネスモデルとして成立しなくなったと指摘されています。

ここからは私の整理ですが、この「補助金代行ビジネス」の崩れ方、少し丁寧に追うと構造がよく見えます。
最初は、コロナ禍のデジタル化支援で補助金の活用が広がった時期。
申請ノウハウそのものが商品になりやすく、参入が増えました。
続いて、審査の厳格化。
「書類を整えれば通る」が通用しなくなります。
最後に、導入したい企業が一巡して需要そのものが減少。
こうして並べると、どの段階も「外部環境頼み」だったと言えそうです。
自分の専門性ではなく制度に乗っていた事業は、制度が変わると一緒に揺らぐ。
制度のすき間で手数料を得るタイプの商売が、まとめて行き詰まった形です。

なお帝国データバンクは、「生成AIによる業務代替」を直接の倒産理由とするケースはまだ確認できない、と留保もつけています。
AIが直接トドメを刺したわけではない。
でも、AIで誰でも作れるものが増えた結果、「制度頼み」「代行頼み」のビジネスの弱さが先に表面化した——そう読めるデータだと思います。

興味深いのは、コンサル市場そのものは縮んでいないこと。
市場規模は2023年度に4兆円を突破し、従業員数は17万人に達しています。
つまり「業界が沈んでいる」のではなく、業界の中で選別が始まっている、と読むほうが正確だと思います。
パイは大きいまま、取り分の偏りが激しくなっている。
だからこそ「自分はどちら側にいるのか」を確かめる意味がある統計だと感じています。
伸び率が縮小傾向にあるという点も合わせると、「市場の拡大が全員を底上げしてくれる時期」は終わりつつあるのかもしれません。

AIに食われたのは「コンサル」ではなく「代行」

AIに食われるのは代行

生成AIの影響として挙げられているのは、基礎的なリサーチ、データ収集・分析、資料作成、研修コンテンツの代替です。
ここ、冷静に見ると共通点があります。
どれも「やり方が決まっていて、誰がやっても結果が大きく変わらない仕事」なんですよね。

少し前まで、市場調査レポートを外注すると数十万円、納期は数週間という世界でした。
今は同じ粒度の下書きなら、AIが数分で出してきます。
もちろん最終品質は人のチェック次第ですが、「外注する理由」が問われるようになったのは確かです。

発注側の変化も見逃せません。
「まずAIにやらせてみてから、足りない部分だけ外部に頼む」という順番が、当たり前になりつつあります。
以前は「丸ごと外注」が前提だったのが、これからは「差分だけ外注」。
頼まれる側からすると、求められる仕事の純度が一気に上がるわけです。

私自身、AI導入のサポートをしている側なので、この変化は日々肌で感じています。
発注側の企業さんは、もう気づいているんです。
「この資料、ウチでAI使って作れるよね?」と。
代行そのものを売り物にしてきた事業者ほど、この一言が刺さります。

イメージしやすいように、私の現場感で「AIに渡りやすい仕事」と「人に残りやすい仕事」を並べてみます。

AIに渡りやすい仕事 人に残りやすい仕事
市場データの収集・整理 「で、ウチはどうする?」の意思決定支援
報告書・提案書の下書き 提案を相手の言葉で語り、納得してもらうこと
研修資料・マニュアルの作成 現場の抵抗感をほぐしながら定着させること
申請書類などの定型ドキュメント 制度の先を読んで戦略を組み替えること

左の列は「成果物」が価値だった仕事、右の列は「関係性と判断」が価値の仕事、とも言えます。
左側を効率化の武器にして、右側に時間を使う。
この組み替えができるかどうかが、業種を問わず問われ始めているのだと思います。

研修の現場でも、この組み替えがうまい人を何人も見てきました。
ある方は、毎月かかっていた報告資料の作成をAIに下書きさせるようになって、浮いた時間で現場メンバーへのヒアリングを増やしたそうです。
すると報告の中身が「数字の羅列」から「現場で起きていることの解説」に変わって、経営層からの評価が上がった。
作業をAIに渡したことで、その人にしか書けない報告になったわけです。
道具に仕事を奪われるか、道具で仕事を深くするか。
同じAIを使っても、向かう先はこんなに違います。

生き残る側の共通点——「この人、感じいいな」の正体

頼られる人の正体

じゃあ、何があれば残れるのか。
ここからは私の見解です。
正直、これに綺麗な正解を出すのは難しいなと思っています。
それでも、AI研修やコンサルの現場で「この人は大丈夫だな」と感じる人には共通点があります。

AIを使いながら、人間にしか出せない価値を生み出している人です。

具体的に言うと、まず「信頼」。
同じ提案書でも、AIが書いたものと、その業界で長くやってきた人が自分の言葉で説明するものでは、受け取る側の安心感がまったく違います。
何を言うかより、誰が言うか。
AIはコンテンツを量産できますが、「この人が言うなら信じる」という関係は量産できません。

次に「相手のビジョンを理解して動けること」。
ふわっとした相談から「本当はこうしたいんですよね」を言語化して、先回りして動く。
この工程は、今のところ人間のほうが圧倒的に得意です。

そして最後は、身も蓋もないようですが「人間力」だと思っています。
「この人、感じがいいな」「なんか好きだな」——発注の最後のひと押しって、案外そういうところだったりしませんか?
AIで作業が同質化するほど、この差は逆に大きくなっていく気がしています:)

「でも信頼とか人間力って、どう鍛えるの?」と思いますよね。
私の答えはシンプルで、AIで浮かせた時間を、人に使うことです。
資料作成が3時間から30分になったら、浮いた2時間半でクライアントの話を聞きに行く。
現場を見に行く。
雑談する。
信頼は成果物からは生まれにくくて、回数と時間から生まれます。
AIは信頼そのものを作ってはくれませんが、信頼を作るための時間なら作ってくれる。
この使い方ができる人が、結果的に「頼られる側」に回っていくのだと思います。

コンサルだけの話じゃない

コンサルだけの話じゃない

ここまで読んで、「自分はコンサルじゃないから関係ない」と思った方にこそ、もう一歩だけ付き合ってほしいです。
この「代行型から先に厳しくなる」構図、実は職種を選びません。

ライターなら、決まったフォーマットの記事量産はAIに寄り、企画と取材と「この人に書いてほしい」が残る。
士業なら、書類作成そのものより、リスク判断と「この先生に任せたい」という信頼が価値になる。
デザインなら、量産バナーはAIで作れても、ブランドの世界観を言語化して形にする仕事は残る。
エンジニアも同じで、仕様どおりに書くだけのコーディングはAIが速く、何を作るべきかの設計と判断に価値が寄っていきます。

会社員の方も、社内での役割が「依頼されたものを形にする」に寄っているなら、この統計は他人事ではないかもしれません。
ただ、悲観する話でもなくて。
AIに渡せる部分を先に自分から渡して、空いた時間で「判断」や「調整」側に軸足を移した人から、社内での頼られ方が変わっていきます。
週に1回の定型レポートをひとつ選んで、AIに下書きさせてみる。
浮いた時間で「このレポート、そもそも誰の何の判断に使われてるんだっけ?」を考えてみると、自分にしか出せない価値が見え始めます。

逆に、副業やフリーランスの方には、このニュースはチャンスでもあると私は思っています。
厳しくなっているのが「代行型」だとすれば、少なくとも私がいるAI導入支援の現場では、「伴走型」の相談はずっと増え続けています。
AIの使い方を一緒に考えて、現場に定着するまで付き合う支援は、体感としてはむしろ人が足りていません。
始めるなら、いきなり「AIコンサル」を名乗る必要はなくて、自分の得意分野×AIの「30分の壁打ち相手」くらいの小ささからで十分です。

経営者の方なら、コンサルの選び方の目利き基準が変わります。
「立派な資料を出してくれるか」は、もう判断材料になりにくい。
AIで作れるからです。
次にコンサルと打ち合わせをするとき、「この提案、御社で一番うまくいかなそうな部分はどこですか?」と聞いてみてください。
自分の頭で考えている人かどうか、答え方に出ます。

共通しているのは、「成果物の生産」から「判断と関係性」へ価値が移っていくこと。
コンサル業界の統計は、その変化が一番早く数字に出た場所、という見方もできるのかなと思います。

おわりに——自分の仕事を2つに分けてみる

仕事を2つに分けよう

紙でもメモアプリでもいいので、自分の仕事を2つに分けて書き出してみてほしいです。
左側に「やり方が決まっていて、AIに渡せそうな仕事」。
右側に「自分だから頼まれている仕事」。

右側が思ったより少なくても、落ち込む必要はありません。
私も最初に書き出したとき、左側ばかりで苦笑いしました。
でも大丈夫。
左側をAIに渡す練習を始めた人から、右側が増えていきます:)

ちなみにこの書き出し、チームでやってみるのもおすすめです。
お互いの紙を見せ合うと、「それ、AIに渡せるよ」「それはあなたにしかできないやつ」が客観的に見えてきます。
自分では「価値ある仕事」と思っていたものが実は左側だった、という発見も含めて、働き方を見直すきっかけになるはずです。

出典

画像の引用

著者

neco. 🐈‍⬛
AI活用コンサル/ITエンジニア歴20年。会社員として400人規模のAIリスキリング研修を統括しつつ、副業で経営者・個人事業主向けにAI導入〜実装をサポート中(経営3年目)。
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