「AIは入れた、でも現場が動かない」——管理職1,008名調査で見えた、日本の定着ボトルネックは課長・リーダー職
その他 2026年04月21日
#コーレ #生成AI導入 #調査 #管理職 #定着

「AIは入れた、でも現場が動かない」——管理職1,008名調査で見えた、日本の定着ボトルネックは課長・リーダー職

ニュース

研修の現場でいちばん切実なのは、「入れました!で止まってる会社が本当に多い」ということ。
導入のハンコは押したけど、現場が動かない。
上は「使ってね」、下は「使いたい」、でも真ん中が止まってる——そんな会社、結構ありますよね。
最新の調査は、その"真ん中の詰まり"を数字ではっきり見せてくれました。

コーレ株式会社が2026年3月12日、「2026年最新・企業の生成AIの利用実態」調査結果を公表しました(本稿の執筆は4月21日)。
調査対象は業務で生成AIを導入している企業の管理職1,008名、実施期間は2026年1月28日〜29日。
プライム上場企業が40.0%、スタンダード上場15.9%、未上場・中小企業20.5%という構成です。

結果のヘッドラインは3つあります。

  • 業務で使われているAIのトップ3: ChatGPT(OpenAI系、Codex含む)が57.7%、Gemini(NotebookLM含む)39.3%、Microsoft Copilot 30.3%
  • 7割超(約71.3%)の企業が「使いこなせない層による業務支障」を実感
  • 使いこなせない層のトップは「課長・リーダー職」(29.3%)。経営層26.8%、一般職25.6%と僅差

これはつまり、AI導入の成否が"真ん中の層"のリテラシーで決まる時代に入った、ということだと思います。

3行まとめ

  • 日本の"AI入れた企業"の内訳は、ChatGPT 57.7%/Gemini 39.3%/Copilot 30.3%の三強体制
  • 導入はゴールじゃなくスタートで、7割超が「使いこなせない層の業務支障」を既に感じている
  • 詰まってるのは現場でも経営層でもなく、真ん中の課長・リーダー職というリアル

ポイント

導入率の話はもう古くて、今は"定着"の勝負。
ボトルネックは課長・リーダー職というデータで、「誰に研修を入れるべきか」の答えが見えてきました。
投資意欲は高くて約86.5%が「今後AIへの投資を増やしたい」と答えています。


用語の整理(最初に2語だけ)

用語 ざっくり説明
生成AI 文章・画像・コードなどを"生成"するAI。ChatGPTやGemini、Claudeなど
定着 「入れた」で終わらず、日常業務で実際に使われ続けている状態。導入の次に来る壁

詳細

1. なぜ重要か——「入れたか」の議論から「使えているか」の議論へ

2024〜2025年は「生成AIを導入しているか」が話題の中心でした。
2026年4月のこの調査は、その問いがもう通用しないことを示しています。
導入している企業の中でも、7割超が「使いこなせない層による業務支障」を既に実感しているからです。

前はこうでした:

  • 「うちの会社、AI入れてる?」→「入れてる/入れてない」で二分

これからはこう変わります:

  • 「うちの会社、AIを使いこなせてる?」→「どの層が詰まってる?」という粒度の話

"入れた"ことを成功とするKPIはもう機能しなくて、"現場で回ってるか"を見るKPIに差し替えないといけない段階に入ったかなと思います。

2. トップ3を読む——ChatGPT 57.7%、Gemini 39.3%、Copilot 30.3%

業務で実際に使われているAIのトップ3はこうでした(複数回答)。

サービス 利用率 提供元
ChatGPT(Codex含むOpenAI系) 57.7% OpenAI
Gemini(NotebookLM含むGoogle系) 39.3% Google
Microsoft Copilot 30.3% Microsoft

業務で使われているAIトップ3のグラフ(ChatGPT 57.7%、Gemini 39.3%、Copilot 30.3%)
業務で活用されているAIのトップ3。ChatGPT半数超、Gemini 4割弱、Copilot 3割の三強体制(出典: コーレ株式会社)

ここで指標の読み違いに注意したいポイントがひとつあります。
本稿の「57.7%」は、生成AIを導入済みの企業に勤める管理職・マネージャーがどのツールを使っているかの比率(回答者ベース=1,008名)で、コーレ調査の固有値です。
一方、よく話題になるNRIの「57.7%」は企業の生成AI導入率そのもの(母集団=全企業)という別指標なので、同値で並べて語ると誤読のもとになります。
数字は同じでも"何を測ったか"が違うので、本稿では前者(コーレの利用ツール比率)として扱っています。

Claudeやパーソル系のサービスは、この調査の上位には出てきていません。
ChatGPTが過半数を押さえる状況は続いていますが、Geminiが4割弱、Copilotが3割というのは企業用途としてはかなり大きい数字。
「仕事で使うなら結局Copilot」がじわじわ浸透してる印象があります。
複数AIを併用している企業が多いと読める数字なので、"1社1AI"ではなく"1人で複数AIを使い分ける"のが標準になってきた、という見方もできますよね。

活用業務の内訳も共有しておきます。

活用業務 割合
文書作成 63.1%
情報収集・要約 51.4%
業務効率化が目的 66.2%

活用業務分布グラフ(文書作成63.1%、情報収集51.4%、アイデア出し37.4%)
活用業務の内訳。「自分の手元仕事から定着」というフェーズを示す分布(出典: コーレ株式会社)

文書作成が1位、情報収集が2位というのは「リスクが低くて成果が見えやすい領域」から定着している証拠でもあります。
いきなり顧客対応や経営判断に使う、みたいなチャレンジングな使い方ではなく、"まず自分の手元仕事から"というフェーズ。

3. 真の課題——使いこなせない層は課長・リーダー職が最多

ここが今回のハイライトです。

「使いこなせない」と回答された割合
課長・リーダー職 29.3%
経営層 26.8%
一般職 25.6%

使いこなせない層の職種別グラフ(課長・リーダー職29.3%、経営層26.8%、一般職25.6%)
今回のハイライト。真ん中の課長・リーダー職がトップに来る構図は業界の常識を覆す数字(出典: コーレ株式会社)

僅差といえば僅差なんですが、「現場よりも管理職・経営層の習熟遅れが顕著」というのは業界の常識をひっくり返す数字だと思っています。
「若い人は使えてる、上が追いついてない」という構図が、"真ん中が一番詰まってる"という現実だった。

研修の現場でこの数字にすごく納得感があって、課長・リーダー職の人たちが抱えてるハードルは明確に3つあります。

  • 時間がない(現場でも管理でも板挟み)
  • 試す場がない(部下には"使え"と言うけど、自分が使う時間は切れない)
  • 「わからない」と言える場が減る(ポジション的に)

一般職は業務時間の中で試せるし、経営層は「わからない」と公言できる強さがある。
でも真ん中は、プライドと時間の両方が壁になっているパターンがとても多いんですよね。

使いこなせない層による業務支障の実感度(とてもそう思う22.2%、ややそう思う49.1%で計7割超)
「使いこなせない層による業務支障」の実感度。合わせて71.3%が支障を感じている(出典: コーレ株式会社)

4. 投資意欲と障壁——「使いたい、でも踏み出せない」

投資の温度感は実はとても高いです。

項目 数値
今後AIへの投資を増やしたい(合計) 約86.5%
AI導入がうまくいっている(合計) 約70.1%
100〜500万円を投資している企業 21.5%

今後のAI投資増額意向グラフ(とてもそう思う29.6%、ややそう思う56.9%で計86.5%)
投資意欲は高く、約9割が「増やしたい」と回答。詰まっているのは気持ちよりリテラシー側(出典: コーレ株式会社)

調査対象の管理職・マネージャーの約9割(86.5%)が「投資を増やしたい」と回答している一方、障壁も明確に出ています。

障壁 割合
セキュリティ懸念 33.5%
活用アイデア不足 26.0%

活用阻害要因グラフ(セキュリティ懸念33.5%、活用アイデア不足26.0%、情報システム非協力22.4%)
活用を阻害している要因の上位。セキュリティとアイデア不足がツートップ(出典: コーレ株式会社)

セキュリティは外部支援で解決できる領域が増えてきましたが、"活用アイデア不足"は社内でじっくり作り込むしかない領域。
ここが伸びる会社と止まる会社の分水嶺になるのかなと思います。

5. 影響(誰にどう効くか)

会社員・現場リーダーのあなた
このデータは、あなたが一番のボトルネックかもしれない、と言っています。
ただし裏を返せば、ここを抜けた人が社内で一番レバレッジが効く立ち位置でもあります。
1日15分でいいので、「自分の今週のタスクをAIに説明してみる」時間を取ってみてほしいです。
"使う"より"説明する"の方が、AIに任せられる仕事の解像度が上がります。

副業・フリーランスのあなた
クライアント企業の課長・リーダー層を"助ける"ポジションに、大きな需要が発生しそう。
「AIを教えられる人」より、「AIと現場の通訳ができる人」のほうが重宝される時期です。
研修より伴走、というニーズが広がっていくのかなと思います。

経営者のあなた
投資を"ツール購入"から"研修と実装支援"にシフトする時期かなと思います。
このデータは、「買ったソフトを使える人がいない」という古典的な問題がAIでも起きてることを示唆しています。
課長・リーダー職を対象にした、30時間程度の伴走型プログラムは、費用対効果の観点で有力な選択肢のひとつとして検討する価値がありそうです(※定量比較の根拠は限定的なので、ここは筆者仮説として受け取ってください)。
本稿の投資意欲86.5%は「投資を増やしたい」と回答した管理職の割合で、ここが研修費の原資につながるかどうかは経営判断次第、という構造になっています。

6. 海外動向との比較——"使いこなせない"の放置リスク

海外大手ベンダーが企業向けAIエージェント機能を拡充しているという報道は各所で見かけますが、本稿執筆時点で筆者が各社公式の具体的な導入率数値を統一フォーマットで確認できたわけではないので、ここは"海外の方がエージェント活用が一歩先に進んでいる印象がある"程度の筆者観測として受け取ってもらえると助かります。

日本で"真ん中の層"が詰まっている間に、海外はエージェント導入のフェーズに入りつつあるという肌感。
この温度差が2026年後半〜2027年の業績差にどこまで表れるかは、各社の定着施策次第。
焦る必要はないけれど、"使いこなせない"を放置すると世代遅れになりかねない、という構図は変わらないかなと思っています。

7. 注意点——母集団・設問差をもう一度整理

コーレ調査の扱いで覚えておきたいのは、母集団が"生成AIを業務で導入している企業の管理職"である点。
「未導入企業を含まない」のでNRIのような全企業調査とは別の絵が出ます。
さらに「使いこなせない層」の質問は管理職の主観評価なので、現場アンケートや客観指標(利用ログ、定着率)と突き合わせると別の数字が出る可能性もあります。
このあたりの前提を踏まえて、数字は「導入後の定着課題の示唆」として読むのがちょうどいいかなと思います。

今日の1アクション

社内でAI導入に関わっている方は、「うちの課長・リーダー職、ちゃんと触ってる?」を1人だけでいいので観察してみてほしいです。
全員調べる必要はなくて、1人の使い方を見るだけで、詰まってるポイントはだいたい見えます。
そこから具体的な支援策を考える方が、壮大な研修計画を立てるよりも早く効果が見えやすいのかなと思います:)

画像の引用

出典

著者

neco. 🐈‍⬛
AI活用コンサル/ITエンジニア歴20年。会社員として400人規模のAIリスキリング研修を統括しつつ、副業で経営者・個人事業主向けにAI導入〜実装をサポート中(経営3年目)。
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